第11章 ✼薺✼
「っ……」
ごめんね、と一言いいたいのに、凛の涙を見ると自分も泣いてしまいそうになる。
すると、謙信様が優しく頭を撫でてくれた。
「結を遠くに連れて行ってしまうこと、本当に申し訳ないと思っている」
「っ…謙信様……?」
「だが俺も結が居ないと生きていけん。だから、必ずこの世の誰よりも幸せにすると誓おう」
「本当に、ですか?世界一ですよ?」
凛も、謙信様に答えるように涙を拭きながら言葉を紡いだ。
「ああ。約束しよう。結のために泣いてくれてありがとう。行こうか、結」
「……はい。元気でね、凛」
それから私が踵を返す直前、凛は「幸せになってね」と言いながら笑ってくれた。
「良い友を持ったな」
「……ありがとうございます」
「だが先程の言葉は見過ごせない。帰ったらじっくり聞かせてもらおう」
「うっ……」
見過ごせないと言いつつも、謙信様の表情は穏やかだ。
(まあ……実際あの時の告白は断ってるしやましい事も無いしね)
「謙信様、結さん。あとの時間は二人でゆっくり過ごして」
「いいの?」
「勿論。それに今日は——でしょ?」
「っ、うん……!ありがとう…!謙信様、見せたいものがあるんです」