第10章 ✼(黄)水仙✼
またこの男は何を言い出すのか。
「実は明日朝と夜の二回ワームホールが出現する予定なんです」
「そんな事があるのか」
「俺も驚いて調べてみたんですけど、やっぱり明日出るみたいです」
「一度目のワームホールで現代に行って、二度目で帰って来るって事……?」
「そう。ほぼ確実にここと500年後が繋がってるからちゃんと帰ってこられるはずだよ」
結の居た世界……
前から少し気になってはいた。戦も無ければ剣を持つことも無い。そんな所が本当にあるのか……と。
「謙信様は見てみたいですか?私の住んでいた所」
結が、俺の様子を窺うように顔を覗き込んでくる。
正直、見てみたい。結の事なら何でも知っておきたい。
だが、一つ心配があった。
元居たところに戻れば、そこが恋しくなってしまうのではないか。
俺の事を愛してくれているとはいえ、故郷を捨てるのはそんなに簡単な事ではない。
それがここより遥に平和な世なれば尚更だ。
「あぁ……見てみたいな。だが……お前はそれで苦しまないか?」
正直に聞くと、結は何のことですか?と首をかしげた。
「私は謙信様に現代の事も知ってもらいたいです」
結は時に、俺の不安を何でもないように笑う。
(俺が過保護すぎるのか?)
なにはともあれ、俺は結と佐助と共に現代へ行くことになった。