第10章 ✼(黄)水仙✼
§ 謙信Side §
「謙信様、いますか?」
誰かの呼び声に目が覚めた。
「……佐助か」
「はい」
昨日結をなだめているうちに、俺も眠ってしまったらいい。
いつもなら誰かが来ると足音で気付くものなのだが、優秀な忍びである佐助は足音を殆ど立てない。
それに加え、俺自身もかなり疲れていたらしく、佐助から声を掛けられるまで、人が来ていることに気付かなかった。
「やっぱり結さんも一緒に居たんですね」
「結に用だったか?」
「結さんに……というかお二人に。お休みの所申し訳ないんですが、結さんを起こしてもらっても良いですか?」
安心して眠っている結を起こすことはあまりしたくない。
だが、わざわざ佐助がこんな朝早くに来ているのなら急ぎの用かもしれない。
「結。結……」
少しだけ肩を揺すると、結は薄く目を開いた。
「んっ……」
「こら。あまり強く目を擦るなといつも言っているだろう。起こしてしまって悪いな。少し話があるらしい」
眠たそうにしている結の額に口づけて、髪を整えてあげると、結は小さく笑った。
「はい……おはようございます、謙信様」
「おはよう、結さん。起こしてごめんね」
「うん、おはっ……佐助くん……?!もしかして寝起きの私……見てた?」
「うん、まあ」
そして佐助に寝起きを見られた恥ずかしさで顔を赤くする。
朝から百面相だ。
「寝起きなど俺に何度も見られているだろう」
「謙信様に見られるのと他の人に見られるのは訳が違うんです……!」
「ほう……俺だけか。それはいい。佐助。お前は結の寝顔を見た罪で斬る」
「不可抗力です。それと話が進まないのでいちゃつくのは後でしてください」
「あっ……ごめんなさい……」
佐助があまりに真剣な顔をするものだから、何かあったのかと考えてしまう。
「二人に行って欲しい場所があるんです。その名も……
————日帰り500年後旅行!!!!!