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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第10章 ✼(黄)水仙✼



「貴方達、私が誰だか分かってるの?!私は謙信様の許嫁よ!」


「俺の許嫁ならここに居るが」


芝姫は俺を見ると、一瞬取り繕ったような笑顔を見せた後、結に俺に向けたものとは真逆の顔を見せた。

結を支えているほうの腕で手を握ると、結もそれに反応して握り返してくれた。


「……何故貴方がここに」


「俺が全てを思い出したからだ。俺の許嫁は結だ。それはお前が一番分かっているだろう?」


その仲を壊すために結の命を狙ったのだから。


「相変わらず一人で歩けもしない弱い女ね。それに、謙信様は自らの口で私を正室にして下さると言ったのよ?」


芝姫はとうとう俺の前でも結を責め立て始めた。
俺が愛する女を悪く言われて黙っているような男ではないと知っているはずなのに。

女だろうと関係ない。
腰に差していた剣を芝姫の喉元に突き付ける。


「死ぬか」


「……っ!」


流石に刀を向けられるとは思っていなかったのか、体をわなわなと震わせる。


「謙信様、やめてください」


「結……?」


結は俺をなだめるように、空いているほうの手で剣を下ろす。
そして俺と目を合わせて微笑んでから、芝姫に向き直った。


「貴方が本気で謙信様を慕っていることは分かります。でも…謙信様はっ……渡しません……!」


いつも一歩引いている結がこんなことを言うの初めて見た。
俺も女中も一瞬固まってしまう。


「確かに私は弱いです。だけど、それでも謙信様の隣に居たい。謙信様は私が強くなれるまで支えると言ってくれました。だから何を言われても私は謙信様から離れません」


これが結の精一杯のけん制なのだろう。
頼もしい事を言いつつも、耳まで真っ赤にした結は俺の手を無意識に強く握っている。

俺の女はこんなにも健気で、強くて、愛おしい。


(見せつけてやった方が早いか)


俺は結の腰を引き寄せて、芝姫の目の前でその唇を奪った。

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