第10章 ✼(黄)水仙✼
城番は、私を見つけるとすぐに手を振ってくれた。
「結様!お帰りになられたのですね!」
「心配させてしまってすみません」
「いいえ。おかりなさい」
おかえりという言葉を掛けてもらえらのが嬉しくて、また涙が出そうになる。
城の中に入ると、次は女中さんがおかえりなさいと言ってくれた。
会う人みんな私を見て笑顔を見せてくれた。
「結様も帰ってきた事ですし、宴を開きましょう!謙信様!!」
「結も疲れているようだから宴はまた今度にしよう」
謙信様は、私が一人では歩けない事を隠すように腰に腕を回しながら一緒に歩いてくれる。
全ての行為が私の為だった。
「すまないが結は暫くの間はあまり外に出られないだろう」
「分かりました」
女中さんも、以前より痩せた私を見て何かを察してくれていた。
「では、頼んだぞ。結、行こうか」
「はい」
逃げ出すほど辛かった城がとても懐かしくて心地いい。
当たり前のように謙信様の部屋に入れることが幸せだった。
「結」
「ん…っ……」
部屋に入るなり、腰に回された手で強く抱きしめられて口づけをされる。
そして、私の肩口に顔を埋めてきた。
「結……本当に、帰って来てくれてありがとう」
皆の前では完璧な主である謙信様がこんなにも弱っている。謙信様が抱えていた焦りや恐怖が伝わってきて、私はそっと謙信様の頭を撫でた。
「傷を、見てもいいか」