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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第10章 ✼(黄)水仙✼




「結、俺の馬でもいいか?」


「はい。謙信様の馬がいいです」


さらさらの白い毛を持つ馬の頭を撫でると、白馬は私に顔を寄せてきた。


「ふふっ、くすぐったいよ。よろしくね」


謙信様は戦好きだけど、私を戦に連れて行くことは絶対にない。
だから謙信様の今に乗ることもほとんど無かった。


「乗せるぞ。馬に乗ったらしっかり手網を握っておけ」


謙信様に抱き上げられて、なんとか馬の上に乗る。
久しぶりに吸う外の空気は、近くに咲く花の匂いを私に届けてくれた。
そこに、馬に乗ってきた謙信様の匂いが重なる。
私が落ちてしまわないように、後ろから片手で私のお腹を支えてくれている。

私を支える腕に両手で巻き付く。
ふらつく体が落ちてしまわないように、という理由が半分。
後の半分は、少しでも謙信様の体温を感じていたいから。


「行くぞ。体が辛くなったら直ぐに言え、我慢はするな。分かったな?」


「はい」


「俺は少し離れた所から付いていきますね」


子どもをあやすような優しい手つきで頭を撫でてから、謙信様は手綱を引いた。
二人で散歩でもしているかもようにゆっくり、ゆっくりと二人で景色を見ながらたわいもない会話をして進む。

今までの後悔や懺悔、悲しい事は帰ってからちゃんと向き合って話すものだ。
この時間は、「咲いている花が綺麗」「こんなとこに子猫がいる」そんな話をする時間でいい。

夜は宿に寄りながら、数日かけて越後まで戻ってきた。


「もうすぐ着くな。……すまない、結。少しの間だけ目を瞑っていてくれ」


「……?分かりました」


言われた通りに目を瞑る。
誰かが襲ってきている気配も無ければ、何かが起きている様子も無かった。


「もう目を開けていいぞ」


目を開けた先に会ったのは、久しぶりに戻って来る春日山城。


「さっきのは何だったんですか……?」


「もう少ししたら分かる」


私が一人もやもやしているうちに、謙信様は私を抱えて馬から降りる。





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