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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第10章 ✼(黄)水仙✼



首には白い布が巻かれ、腕は細くなり、元々白かった肌は更に儚さを増していた。


「……っ…謙信様……」


どれくらい時間の時間そうしていたかは分からない。
互いに言葉を掛けるわけでもなく、静かに見つめ合っていた。

結の目を見てすぐに気づいた。
その瞳に俺は映っていない事。目に光を宿していない事に。

二人の間には確かな距離があって、そこには見えない壁がある。
俺と結が見ている景色は違うものだと感じた。


「……芝姫様を正室になさるのですよね。おめでとうございます」


淡々と告げられる言葉に、胸が苦しくなった。
これを聞いたとき結はどんな気持ちだっただろう。
誤解だとすら答えてやれない自分を呪った。
だからこそ結に伝えなければならない。


「俺が妻にするのはお前だけだよ」


「え……?」


もっとちゃんとした場所で言いたかったが、この状況では仕方がない。
どうしても今自分の気持ちを伝えたかった。




「俺の妻になってほしい。勿論、正室として」




「っ…………」


結の目に光が戻っていく。


「最も忘れてはならない存在を忘れていた。傷付けた」


「私は貴方から逃げたんですよ……?」


「そうさせたのは俺だ。許されるのなら、もう一度俺の元に来て欲しい。今度はもう二度と離さないから」


結の頬に一筋の涙が伝った。
それはまるで初めて流した涙のように止めどなく、だけど静かに流れていく。


「私は貴方から逃げてしまったうえに死のうとしました。何一つ約束を守れなかった……っ……」


俺達は互いを責める事をしない。
だから自分を責めすぎてすれ違ってしまうこともある。

俺はそのすべてを包み込んであげたい。
何事も人のせいに出来ない結の事を知っているから……結が壊れてしまわないように俺が隣で支えたい。


「それでも俺はお前を愛しているよ。結、返事は?」


「……っ……私は……————


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