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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第9章 ✼赤熊百合✼



§ 謙信Side §

信玄の恋仲を傷付けてしまってから、あの女は俺の部屋に来なくなった。
それは動けるようになってからも、城のどこを探しても見つからない。


信玄もいつも通りに接してくる。
だがその裏には「もう二度とこの話題に触れるな」と言われているような気がして、女の居場所を聞く事など出来なかった。


(そういえば……俺はあの女の名前を知らないな)


信玄が一度俺の前で名を呼んでいたような気がするが、思い出せない。

いつしかそれが頭の中を支配していき、何もするにも上の空になってしまった。


「謙信様〜!!お待たせしました」


城下より更に奥にある草原で立っていた俺を一人の女が呼ぶ。


「芝姫。大事な話とはなんだ」


「あら。随分せっかちですのね」


そう言ってくすくすと笑う芝姫。
同じ城で住んでいるわけでもない芝姫と話す話題など特にない。


「まあ良いですわ。謙信様、私が貴方の許嫁だという話は前にしましたよね?」


「ああ」


「父上ももう痺れを切らしておりますし、謙信様のお体も良くなったと聞いています」


それで……と頬を染めながら俯く芝姫。













「そろそろ私と祝言をあげてくださいませんか……?」











「それは、正室にしろと言っているか?」


「っ……えぇ。そう申しております」


顔を真っ赤にして返事を待つ芝姫を横目に、少し考えた。

俺は天下統一などという目標を持っている訳ではないが、誰かと一緒になっておいた方が上杉の存続の為にも楽だろう。
……それに、許嫁と言うならば後々こうなることは自分もわかっていたはずだ。もう、何もかも、考えることに疲れてしまった。


「……分かった。お前を正室にしよう」


「本当……?!これで父上も安心します」


何か引っかかるような感覚があったのは気の所為だ。

愛が無くても構わないと言っていた芝姫は、どこか嬉しそうだった。

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