第7章 ✼月見草✼
§ 結Side §
「うっ……」
痛みが私を眠りから覚めさせる。
体が鉛のように重い。
「結、起きた?」
視界が開けていくのと同時に目の前に現れたのは、ふわふわとした猫っ毛。
「家康……」
どうしてだろう。
その顔を見るとひどく安心してしまって目尻から一筋の涙が伝う。
「体の調子はどう?」
「体が…重い……お腹も空いた」
お腹が空いたと言うと家康は小さく笑ってお粥を出してくれる。
それにつられて、私も小さく笑ってしまった。
(笑ったの、いつぶりだろう……)
家康は私の体を起こすと、食べさせてくれようとする。
「自分で食べれるよ……」
「どうせ力も入らないんでしょ。こぼされても困る」
「ん……おいしい」
お粥を食べて少し落ち着いたところで、家康はできるだけ優しい口調で私がここにいる理由を話し始める。
信玄様がここに連れてきてくれたことはかろうじて覚えているけれど、朦朧とした意識ではそれ以上は覚えていなかった。
「今日からあんたはまたここに住まわせることになった」
謙信様に何をされたかは覚えていたし、背中辺りに感じる痛みがそれによるものだと分かっていた。
だから、私がここにいる時点である程度予想はしていた。
「はっきり言うけど……もう上杉謙信に会わせる気は無い」
(謙信様に会えない……)
言葉にされると、事の重大さが分かる。
私は自分の目から溢れる涙を止められなかった。
「ごめん」
「違うの……家康……」
「結?」