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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第7章 ✼月見草✼



「……!」


頭が痛い。


──私、死んだりしません。だから安心して私をおそばに置いてください


(なんだ…今の記憶は……!)


「結……」


知らない女の名前が自分の口からでる。
それと同時に、俺に背を向けていた女がこちらに振り向いた。
目を丸くして固まる女。

その女の耳に俺と同じ耳飾りが付いているのを見た瞬間、俺は女に掴みかかっていた。


「痛っ……?!謙信様?!」


体勢を崩した女はすぐそこの木に体を打ち付ける。


「この耳飾りはなんだ」


「これは……」


はっとして耳を隠そうとする手を縛る。


「お前、ただの針子では無いな?」


「そんな事……「では何故俺に酌をされて平然としていた」」


ずっと引っかかっていた事。
俺から言ったこととはいえ、普通主に酒を注がれれば少しなりとも遠慮したり緊張する素振りを見せるものだ。


「お前は俺に酌をされることに慣れていたな」


「……っ!」


頭が痛い。
苛々する。
もう全て思っている事を言ってすっきりしてしまえばいい。


「どこかの姫か?権力のため俺の正室になる事を望んでいるのか?」


「違います……!私はただ……」


女の目から一粒の涙が零れる。


「……!」


胸が苦しい。
何故俺は思い出せない?こんなにも違和感があるのに決定的な何かが掴めない。


「何故お前を見ると胸が詰まる?何故触れたいと思ってしまう?何故……!」


木に体を押し付ける力を強くしたと同時に、女が急に苦しみ出した。


「……ぁっ…!いた、い……!」


咄嗟に手を離せば女はその場に倒れ込む。


(なんだ……?)


しゃがみこみ、女に触れようとした時……


「その女に触れるな、謙信」





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