午後のひととき ~tea time lover~ *イケ戦*
第1章 珈琲慈光
「着いたよ」
「わぁ.....綺麗...」
桜色、とはまさにこれのことだ。
太く根を張った幹に被さる、大きくふっくらと丸い満開の花たち。
花びらはそよ風に色目を変えて、吹く風に拐われて舞っていく。太陽に温められて、クルクルと舞い散る桜の花びらは、シャボン玉のようにも、粉雪のようにも見える。
「寒くない?」
「ん....へいき....」
桜に見とれて上の空でいるのそばで、座りやすそうな場所に持ってきた蓙(ござ)を広げる。真上には、満開の桜がある。
「。こっち」
の手を引いて、蓙まで誘(いざな)う。そのまま上に座って、ゴロンと横になってみせた。
「佐助くん?」
「このほうが首が疲れないよ」
「あ、そっか!」
も嬉しそうに隣で寝転がって『春だねぇ』と、しみじみ呟く。
戦乱の世に面白いほど似つかわしくない、穏やかな時間が流れていった。