第8章 大阪城攻防戦 ~ 一期一振のキモチ ~ 上
加州が余裕のある顔で微笑む。
加州「鶴丸から聞いたよ。弟想いの一期一振が守りもしないのは、攻撃したくても出来ないんじゃないかってね」
一期一振「・・・・」
流石、鶴丸国永。
先程の一撃でそこまで見抜いたか。
加州「・・んで、その時に右脇をやたら過敏に反応してたんだってねー?アンタが過剰になってしまうくらいの大切なモノなんてさ・・・」
一期一振「・・・ッ!?」
すぐさまに脇に手を添えると、そこにあったはずのモノが消えていた。
加州「・・“主の大事なモノ”しかないよね?」
爪紅が鮮やかに映える指から、黒地に赤い紐で括られた小さな御守りが見えた。
堀川「・・いつの間に」
加州「フェイントに見せかけて攻撃ーってね」(クスクス)
・・・油断をした。
あれは主から預かった大切な物だったのに。
一期一振「・・・まさか貴方がそれを奪うとは思いませんでした」
加州「手癖が悪いことは俺もあんましたくないんだけど・・。今回は例外ってことで」
壊れ物を扱うように優しい手付きで加州がそれを握る。
加州「これなんでしょ?主の記憶ってさ」
一期一振「・・・・それを知ってどうするんですか」
堀川「・・・」
加州「ん~・・、こんなことぶっちゃけ、アンタに言いたくはないんだけど」
加州が指で頬を掻きながら、困ったように視線を主の方へ向ける。
加州「泣くんだよね、あの人」
一期一振「え?」
あの御方が・・・泣く?
弱さを決して見せなかったあの人が?
加州「・・寝ながらさ、アンタの名前を呼んで『行かないで』って涙を流すんだ」
堀川「主さんが・・・」
それはあまりにも見に覚えのある記憶。
一期一振『・・・ご容赦下さい』
『ダメだ・・ダメだよ。そんなこと・・許さないから』
(・・あの時、睨みつけるように見つめる主の瞳をみて私は安心したんだ)
その瞳には刀身が貫かれるような激情が宿っていた。
それは初めてみた主の本物の感情。
他の誰にでもなく、自分にだけ向けられたもの。