第8章 大阪城攻防戦 ~ 一期一振のキモチ ~ 上
「一期一振。私がここに来た理由は鯰尾を粟田口の皆と会わせてあげたくて、ここに来た」
一期一振「・・・・・」
「そして、出来ることなら粟田口の皆を本丸に迎え入れたい」
真っ直ぐに私は一期一振の顔を見つめる。
「・・・・?」
でも一期一振の視線はなぜか私より少し下を眺めている。
(・・・私の持ってる刀を見ている?)
『何故?』
あまりにも不自然な視線に、背筋に嫌な汗が流れる。
《一期一振はこの刀が誰の物か知っている?》
自分の刀にそっと触れると、ひんやりと重い感触がした。
その時に腰の後方に巻きつけられている仮面が動く。
(・・・そういえば、一期一振の顔を正面から見ても何もおきなかったな)
万が一の為に顔を覆う鬼の仮面を持ってきたけど、大阪城に潜れば潜るほど仮面をつける機会が全く無かった。
いや、そもそも前の私にはこんなおかしな体質はあったのだろうか・・・?
徐々に戻っている昔の私は普通に刀剣男士を語り合い、そして目と目を合わせて話していた。
堀川『・・・あるじさん?』
堀川『あれ?いきなり顔が赤くなったけど・・・?』
思い出せば、昔の記憶を引き継いで顕現した堀川だってこの体質を知らなかった。
私の最期の使命だけを覚えていたのなら、詳しい経緯や情景を話すことは出来ない。
堀川『僕も完全に覚えているわけではないのですが、一期一振さんは・・・』
あの時、堀川は別の何かを言おうとしていたんじゃ・・・?
堀川の発言を不自然に阻み、暗黙に制した?
現にそれ以降堀川は具体的な発言をしていない。
余計な“なにか”を言わせない為。
あの場所にいて、堀川の言葉を遮った人物。
それはーーー。
監査官『・・・・・一期一振はハルの記憶を奪った張本人だからだろう』
監査官。
刀に向けていた目線と、
心に浮かんだ疑惑と答えを引き連れて、
ゆっくりと、再び一期一振を見る。
一期一振「・・・・」
少し憂いを帯びた瞳が真っ直ぐに私を見つめている。