第12章 生きなきゃいけない
教室に行くと、綾香が駆け寄ってきた。
「おはよう、零」
「おはよう……」
「零、何かあった?やけに暗いけど」
馬鹿な紗希とは違い、綾香にはすぐわかってしまう。
「ちょっと、昨日のかっちゃんがすごいことになったらしい」
「えっ?」
「親が喧嘩して、かっちゃんは自分のことを言ったんだって。結局、離婚でまたお父さんと一緒」
あまり覚えていないけど、小さい頃にも離婚したことがある。
母親が私に毎日暴力振るっていたらしい。
そのことでお父さんが通報し、昔の母親は逮捕された。
今回のお母さんも私のせいで狂ってしまった。
「私のことが醜いって、前のお母さんも言ってた。轟君みたいだなぁ……」
生きているだけで嫌われる人間と生きているだけで尊敬される人間の人生は違う。
強いかっちゃんがこんな真逆な世界に来て、怖かったのだろうか。
「いつも、伝達用ノートが濡れてる。たぶん、かっちゃんが流した涙かもしれない」
私の言葉に綾香は俯く。
「私はそんなかっちゃんに申し訳ないと思う。だけど、何があっても生きなきゃいけない。かっちゃんが応援してくれてるんだから」