第1章 現実に生きる君へ
目を覚ました場所は俺の家ではなかった。
そこは、如何にも女の子部屋というような感じで、ピンクと白の可愛い部屋だった。
何だよ、これ……。
とにかく、うるさいスマホのアラームを止めた。
そこには、平成〇〇年4月9日と書かれてあった。
俺の世界はこんな平成とか無かった。
こんなリアルな世界では無かったはずだ。
机に置かれたプリントクッキーの箱には俺やデク、半分野郎などが写っていた。
この世界は何だんだ?
俺はトイレに行くついでに洗面所で鏡を見た。
そこには、少し可哀想な顔をした女が居た。
夢の中に出てきた女か?
俺はこの女になっちまったのか。
テレビの音が聞こえる和室に入ると、コイツの母親だと思われる女が少し寝惚けた顔で座って居た。
母親は俺を見るなり笑顔で「おはよう」と言った。俺も仕方なく返す。
さすがに親にはバレたくないというのがあった。
ふざけんな、クソが!!と叫びたい気分だが、ぐっと堪える。
そして、朝からやってるテレビニュースの内容も恐ろしい。
子供が狂ったように反抗して親が殺した、という奇妙で恐ろしい話をしていた。
この世界の親はそんなに恐ろしいのか、と震えた。
目の前には適当な朝飯を出され、淡々と食うだけだった。
途中からコイツの弟と思われる男が来て、一緒に食べていた。
「海翔、さっさと食べなさい」
「はーい」
海翔という少年は嫌そうな顔をして急いで食って準備をする。
男も急いで食って、自分の部屋だと思われる場所で準備をした。
独特なブレザーの制服で着るのに少し時間がかかったが、女がやるようにとしかして髪を結んだ。
ちょっとボサボサだが気にしねぇ。俺は元からボサボサだからな。
家を出て、同じ鞄と制服の学生について行く。
「クソが……」
誰にも聞こえないぐらい小さく呟き、俺は大きな舌打ちをした。