第9章 初仕事
「ええ、無法の輩という証拠さえあれば、軍警に掛け合えます。ですから」
「現場を張って証拠を掴め、か……小僧」
国木田は横目に敦を見る。
「え?」
「お前が行け」
「ええぇー!?」
「ただ見張るだけの簡単な仕事だ。それに密輸業者は、大抵、逃げ足だけが取り柄の無害な連中だ。お前の初仕事には丁度いい」
「でも……」
「谷崎、一緒に行ってやれ」
「兄様が行くなら、ナオミもついていきますわー♥️」
その頃、隣室に残ったユウリは太宰と話していた。
「てか、ああ云っても直すつもりないでしょ、治。」
「うん」
「うわー、悪びれる様子もない。それにあの依頼主、根本的に怪しいからあれ付けたでしょ。」
太宰は縄をほどきながら
「半分はそうだけどもう半分は本気で口説いてたよ」
「そういう性格だったね、治は」
縄をほどき終わるのを待って部屋を出たのは、敦達が行った後だった。
太宰はヘッドフォンで音楽を聞きながらソファーに寝そべっていた。
その向かいの席でユウリは携帯ゲームをしていた。
「うぉんうぉん、いぇいぇ~♪しんじゅ~は、ひとりでは、できないー♪」
そこを通りかかった国木田が、それを見て苛立ち、ヘッドフォンとゲームを取り上げた。
「おい二人とも、仕事はどうした!」
「「天の啓示待ち」」
と答える太宰はヘッドフォンをユウリはゲームをすでに奪い返していた。
ハッとして国木田が自分の手を見るとヘッドフォンとゲームがない。
「ふたりなら、できるー♪しんじゅうしんじゅ、しんじゅしんじゅ、レッツゴー♪」
その頃、敦達は樋口に連れられて、現場に向かっていた。ナオミは谷崎の片腕に抱きついている。
「笑い事じゃないですよう…。凶悪なマフィアとか、死ぬかと………。やっぱり、とんでもない処に入っちゃたなあ」
「まあまあ、ボクでも続けられるくらいだから、大丈夫ですって」
「でも、谷崎さんも異能力者なんですよねぇ。僕の役に立たない能力とはちがう」
「ああ、あんまり期待しないで下さいよ。戦闘向きじゃないですから」
「兄様の能力、素敵ですよ?ナオミあれ大好きー」
と谷崎の耳に息を吹きかけるナオミ。
「やめなよナオミ、こんな処で………」
「あら?口答え?」
「え……」
「生意気な口は、ど・の・く・ちかしらー?うふふ♥️」