第9章 初仕事
横で見ていた谷崎とナオミが呟いた。
「で………でたらめだ」
「……ですわね」
「役者!」
「「違ーう。」」
「けどー……うふふ、役者は照れるねえ~、ユウリ」
「うん、ありがたいかも////」
「うーん……」
「どうせ何もせずふらふらしていただけなのだろう?」
「「違うよ」」
国木田は?を浮かべた。
「「この件で私達は嘘はつかない」」
敦も?を浮かべた。
「「……降参かな?敦君」」
「え」
「じゃ、ここの払いはよろしくね♥️」
と言って太宰は伝票を敦に差し出した。
「えええぇ…」
「持ち合わせがないならツケが利くよ。なんと云っても、探偵社御用達のお店、うずまきだからね」
「あー、いいよ。敦君の入社祝いとしてここは先輩の私が奢るよ」
太宰の手から伝票を取ってそのまま会計に出した。
「有難うございます!」
その時、携帯の着信音が鳴った。
谷崎の携帯である。
「依頼か?」
「はい、依頼人の方は既に事務所の方に」
「さあ、仕事の時間だ。私達の過去の職業当てゲエムは、また次の機会に」
~探偵社~
ソファーに腰かけたスーツ姿の若い女性客、樋口。マニッシュな美人である。
向かいの席には谷崎が座り書類バインダーを手に応対している。
その谷崎の席の背後に、ナオミ、敦、ユウリ、太宰、国木田がおり、興味津々に樋口を見ている。
「えっと、調査の御依頼だと伺っておりますが?一体どのようなご用件でしょうか」
「美しい」
いきなり樋口の手を握り、口説き始める太宰。
「睡蓮の花のごとき果敢なく、そして可憐なお嬢様だ。どうか私と、心中していただけ」
ガン!!
とそんな太宰を殴り飛ばしたユウリと国木田。
「……え?」
困惑する樋口に二人は
「あー、お騒がせしました。気になさらずに。」
「今のは忘れて、続けて下さい。」
と云いつつ、太宰を隣室に引っ張っていき、扉が閉まる。
隣室に入ると国木田は太宰に縄を巻き、ユウリは軽く説教をした。
「美人だからって直ぐに口説かないの!少しの間ここで大人しくしてなさい!」
そして国木田は部屋を出た。
戻ると丁度、依頼の詳しい事を話していた。
「そいつは密輸者の類だろう。軍警がいくら取り締まっても、フナムシのように湧いてくる。港湾都市の宿業だな」