第9章 初仕事
「そういえば、お三方は探偵社に入る前は何をしていたんですか?」
その問いに敦の方に振り返る国木田と治とユウリ。
「あ…特に意味は無いんですけど……」
「当ててごらん」
「え?」
「なにね、定番のゲエムなのだよ。新入りは、先輩の前の職業を当てるのさ。ま、探偵修行の一環でもある。」
「ん~」
「……谷崎さんとナオミさんは…学生さん?」
「お、当たった。凄い」
「どうしてお分かりに?」
「ナオミさんはバイトって聞いたし、制服姿からして、現役の学生さんかなって」
「谷崎さんの方は…歳が近そうだし、勘です」
「正直でよろしい。じゃあ、国木田君は?」
突然振られて国木田は珈琲を吹き出す。
「俺の前職など、どうでもいい!」
「うーん…公務員?……お役所勤めとか!」
「惜しい。彼は元々教師だよ、数学の先生だ」
敦はその様子を想像した。
「なんかものすごいく納得……」
「昔の話だ、思い出したくもない」
「「じゃ、私達は?」」
「太宰さんとユウリさん?」
「「そう、私達」」
「お二人は同じ職業だったんですか?」
「「うん」」
「…………太宰さんは………ユウリさんは………ん~駄目だ……まったく想像つかない」
「無駄だ小僧。武装探偵社七不思議の一つなのだ、こいつらの前職は」
「確か最初に当てた人に、賞金が出るんですよね?」
「賞金!?」
敦は目の色を変えた。
「そうなんだよね。誰も当てられなくて賞金が膨れあがってる。」
「膨れ上がった……賞金!!」
「……ち、ちなみに、その膨れ上がった賞金というのは、いかほどですか?」
「「総額七十万」」
思わず席を立つ敦。
その勢いに一瞬驚く谷崎とナオミ。
「七!十!万!」
「あ、当たったら、もらえるんですね?本当に、本当ですね?」
現在、無一文の男、目の前の賞金七十万に燃える。
「ふん!自殺主義者に二言は無いよ」
「敦君、目の色が変わってる」
「凄い気迫ですわ」
「七十万!頂きます!」
「相場師!」
「「違う」」
「作家!」
「「はずれ」」
「勤め人!」
「「はずれ」」
「研究職!」
「「違ーう」」
「弁護士?」
「「ノー!」」
「新聞記者とか!」
「「ブー」」
「大工さんだ!」
「「ちがいまーす」」