第7章 少年と虎
「はは。凄いですね自信のある人は。僕なんか 孤児院でもずっと『駄目な奴』って言われてて。そのうえ今日の寝床も明日の食い扶持も知れない身で。こんな奴がどこで野垂れ死んだって、いや いっそう喰われて死んだほうが」
それを聞いていた太宰とユウリは空を見上げて
「「却説ーそろそろかな」」
ガタン!
突然の物音に敦は驚いた。
「今…そこで物音が!」
怯える敦を横に太宰とユウリは至って冷静だった。
「そうだね」
「きっと奴ですよ、太宰さん!夏目さん!」
「風で何か落ちたんだろう」
「ひ人食い虎だ僕を喰いに来たんだ。」
「座りなよ敦君、虎はあんな処から来ない」
「ど どうして判るんですか!」
「そもそも変なんだよ敦君」
「経営が傾いたからって養護施設が児童を追放するかい?大昔の農村じゃないんだ」
「いや そもそも 経営が傾いたんなら一人二人追放したところでどうにもならないよ。半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」
「太宰さん、夏目さん何を云って」
雲に隠れてた満月が顔を出し敦を照らした。敦はそれに気付き月を見た。すると敦の様子が変化した。
「君が鶴見川べりにいたのが4日前。同じ場所で虎が目撃されたのも4日前。国木田君が云っていただろう、『武装探偵社』は異能の力を持つ輩の寄り合いだと。」
「巷間には知られていないがこの世には異能の者が少なからずいる。その力で成功するものもいれば、力を制御できず身を滅ぼすものもいる。大方施設の人は虎の正体を知っていたが君には教えなかったんだね」
「「君だけが解っていなかったのだよ。君も『異能の者』だ。」」
「「現身に飢獣を降ろす月下の能力者」」
敦が居たところには白い毛皮の虎がいた。
虎は二人に襲いかかってきた。
二人は双手に別れた。虎は太宰を標的にした。
ユウリは少し離れたところに立った。
「こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単にへし折れる。」
太宰は避け続けたが行き止まりになってしまった。
「獣に喰い殺される最期というものも中々悪くないが、君では私を殺せない」
太宰は襲いかかる虎に触れた。すると虎は敦に戻った。
「私の能力はあらゆる他の能力を触れただけで無効化する」