第7章 少年と虎
「云っただろう 武装探偵社は荒事専門だと。茶漬け代は腕一本かもしくは凡て話すかだな」
その様子を見ていたユウリは国木田を制し、太宰は敦に質問した。
「まあまあ国木田君。君がやると情報収集が尋問になる、社長にいつも云われているでしょ。」
「……ふん」
国木田は敦の手を離した。
「それで?」
「……………うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです。」「畑も荒らされて倉も吹き飛ばされてー死人こそ出なかったけど貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって口減らしに追い出された。」
「「そりゃ災難だったね」」
「それで小僧、「殺されかけた」と云うのは?」
「あの人食い虎ー孤児院で畑の大根食ってりゃいいのにここまで僕を追いかけてきたんだ!」
「あいつ僕を追って街まで降りてきたんだ!空腹で頭がもうろくとするしどこをどう逃げたのか」
「それいつの話?」
「院を出たのが2週間前川であいつを見たのが4日前」
「確かに虎の被害は2週間前からこっちに集中している。それに4日前に鶴見川で虎の目撃証言もある。」
それを聞いていたユウリは何か考えていた。
太宰は敦に笑顔で
「敦君これから暇?」
敦は嫌な予感がしてる顔をした。
「君が『人食い虎』に狙われているなら好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな?」
ガタッ!
敦は勢い良く立ち上がって太宰に抗議した。
「嫌ですよ!それってつまり『餌』じゃないですか!誰がそんな」
「報酬出るよ」
動きが止まった
「治、私も行っても良い?」
「良いよ」
太宰は紙切れを国木田に差し出しながら
「国木田君は社に戻ってこの紙を社長に」
「おい、三人で捕まえる気か?まずは情報の裏を取って」
「いいから」
敦が遠慮がちに
「ちちなみに報酬はいかほど?」
「こんくらい」
太宰が敦に一枚の紙を見せると敦の顔が変わった。
~港のある倉庫~
『完全自殺』を読んでいる太宰と背中合わせにユウリは静かに鼻歌を歌ってた。少し離れた所で敦は座っていた。
「………本当にここに現れるんですか?」
太宰は敦を見て
「本当だよ」
ユウリは歌うのを辞めて
「心配いらない。虎が現れても私たちの敵じゃないよ。こう見えても『武装探偵社』の一隅だ」