第4章 太宰 中也 夏目 十五歳
ユウリは中也に言った。
「だけど、画面に映っていた先代が他の場所でも同じ演説をしたら?」
森は真ん中に立ち外の景色を見ながら言った。
「彼は自分の死因が病死ではなく暗殺だと言っているのだ。」
「此が先代派に知られたら、組織内の三割が敵に回る。勝っても負けてもポートマフィアは壊滅だろう。」
「中也君、アラハバキというのは何者なんだい?此方も軽く調べたよ。アラハバキというのは伝承上の神の眷属だ。只、余りにも古いために正体は判然としない。」
「神何てものの存在を信じるのかよ。」
「君がアラハバキについて調べていたのは偶然じゃない。私達と同じ噂を耳にして真相を追っていたのだろう?」
「流れ者の多い土地だ。噂の出所を突き止めようがねぇ。」
「擂鉢街がどうやって出来たか知ってるか?」
其処でずっと横を向いて居た治は中也に向き直った。
「あれは大戦末期に原因不明の爆発が起き、その跡地に出来たか町だ。」
「その爆発の原因がアラハバキなんだとよ。」
「ん?」
「噂じゃ、八年前捕虜になった海外の兵士が疎外にあった軍の施設で拷問を受けた。その怒りと怨みがアラハバキを呼び起こした。そして、その黒い炎がこの国の軍施設ごと吹き飛ばした。その爆発で出来たのが」
「あの擂鉢街と言うわけか。」
「太宰君、夏目君。どう思う?」
治が少し前に乗り出しながら。
「恐らく、僕達が知らない異能力が使われたんだ。」
「もし、さっきの映像が偽装では無かったら私達は終わりだね。」
「やれやれ」
森は窓に顔を向けたまま治に言った。
「太宰君、君に指令を出す。今日の映像と同じ事を先代派の前でやられる前に犯人を見付けること。良いね?」
「時間が無さそうだけど、それ僕一人でやるの?ユウリと一緒だったらまだいいけど。」
ユウリは苦笑いを浮かべて
「一人じゃないと思うよ相手は私じゃないけど。そうでしょ、森さん。」
「ああ、そうだよ。夏目君の言う通り、其処に居る中也君に手伝って貰いなさい。」