第4章 太宰 中也 夏目 十五歳
「もし断ったら?」
森は手元にあったリモコンを手にとりボタンを押した。すると音声が流れ始めた。
「おい!中也!助けてくれ!其処に居るだろ!ポートマフィアに捕まっちまった。お前ならなんとか出来るだろ?早く助けてくれ!何時もみ」
其処で森は止めた。
中也は怒りで体を震わした。
「横浜の一等地に縄張りを構える反撃主義の組織。だが銃で武装していても君以外の構成員は只の子供だ。同じリーダーとして心中察するよ。」
中也は森を睨み付けた。
「てめぇ」
「とまぁ、この通りだよ。太宰君。」
森は治とユウリに目を向けた。
「今この部屋で最も強大な暴力を持つのは中也君だ。だが、マフィアにとって暴力は指針の一つに過ぎない。マフィアの本質はあらゆる手段で合理性をコントロールする事だ。」
治は森に向き直り
「どうしてそんな教訓を僕に教えるの?」
「さて、何故だろうね?」
ユウリは静かに笑っていた。
「情報を交換しても良い。」
森と治は中也に向き直った。
「但し、手前らが先に話せ。判断はそれからだ。」
「良いだろう。我々は先代が現れたと言う噂を追っている。太宰君と夏目君の調べではこの半月で三回、いずれも擂鉢街でその姿が目撃されたそうだ。そして四回目が昨日。彼は黒い炎で君達を吹き飛ばした。」
「死者は蘇らねぇ」
「私もそう思う。だが、そうも言ってられなくなった。」
森は再びリモコンのスイッチを押した。すると部屋の壁に映像が流れ始めた。
「此はポートマフィアの金庫室。この本社ビルの中で最も浸入が難しい場所だ。」
すると、映像が乱れ金庫室に一人の老人が出現した。「先代?」
「わしは甦ったんだ。地獄の業火の中から。何故か分かるか?先生。怒りじゃ。そして、奴は怒りを食らう。わしを地獄より呼び戻し、更なる怒りを生み出させるはらずもりよう。神の獣、黒き炎のアラハバキ。」
先代は黒い炎に変わりそして其処で映像は乱れ終了した。
森は部屋のカーテンを開けた。外には飛行機雲が描かれていた。
「以上が監視記録に残された映像だ。今のところこの映像を知るものはごく一部で厳しく箝口令を強いている。」