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二人のビー玉【文スト】[更新停止中]

第4章 太宰 中也 夏目 十五歳


太宰は森に向き合った。

「宛が外れたね。自殺未遂の患者を共犯者に選んだのは言い人選だった。一年経ってもこうして僕は生きている。」

「外れてなんかいないさ。君と私、そして彼女の計らいのお蔭で見事に作戦を遂行してみせたじゃないか。」

少女はじっと二人の会話を静かに聞いている。

「作戦ていうのは、暗殺に関わった人間の口を封じて初めて完了という。」
「その点は彼女はともかく僕は共犯者に適任だった。だって僕の証言で貴方が首領になったあと、僕が動機不明の自殺を遂げたとしても
誰も疑わないから。」

一瞬の沈黙が流れた。

少女が口を開いて、

「私は君に似た人を知っている。」

森は天井を仰ぎながら

「兎に角、口封じをするならとっくにやってるし、君がそんなに臨むなら楽になれる薬を調法してあげても良い。」

太宰は、目を輝かせた。
「本当?」

森は机の横の引出しから銀色の紙を出しながら

「その代わりちょっとした調査を頼みたい。なぁに大した仕事じゃないし何の危険もない。」

「胡散臭(ボソッ)」

「横浜疎外にある擂鉢街は知っているよね?」

太宰の方に向き直り

「その近辺、最近ある人物が現れたという噂がある。その噂の真相を調査してほしい。夏目君、君も一緒に。」

夏目と呼ばれた少女は溜め息をつきながらも「了解」と言った。

銀色の紙を掲げ
「これは銀の託宣と呼ばれる権限委譲書だ。これを見せればポートマフィアの構成員は何でも言う事を聞く。」

「誰の噂?」

「当ててごらん。」

夏目は誰の噂か知っているようだ。
太宰は俯いて考え始めた。

「具付するだけで害のなす噂。」

「成る程、そういうことか。」

太宰は立ち上がり

「現れたのは先代のボスだね」

二人は森に近寄った。

「その通り、世の中には墓から起き上がっていけない人間が存在する。分かるね?」

太宰は銀の託宣を手に取り
「薬、約束だよ。」

すると、夏目が森の横に立って

「此が太宰君、君にとって初仕事だ。」

「「ようこそ、ポートマフィアへ。」」

太宰は一瞬目を見開いて扉の方へ歩いていった。その後を夏目が追いかけた。
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