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二人のビー玉【文スト】[更新停止中]

第4章 太宰 中也 夏目 十五歳


裏路地に佇む茶色の建物の中の一番奥の部屋には、三十代前半の白衣を着た男性が嘆いていた。

「これは、どうにもならないね。密輸中の納入期限が一週間も過ぎている。これじゃあもうじき部下は、全員キッチンナイフで敵と戦うはめになるよ。」

「それだけじゃない、抗争激化に保母ビジネスの解除。はぁ、ひょっとして向いてないのかなぁ?ねぇ、太宰君どう思う?」

男性は、後ろの薬品棚の側に座ってビーカーの中身をかき混ぜている包帯だらけの少年に尋ねた。

「あのね森さん、お金が無いとか情報が無いとか部下からの信用が無いとかそんなの最初から分かっていた事でしょ。」
太宰と呼ばれた少年は辛辣に言った。

森という男性は肩を落としながら
「酷いなぁ~。」と言った。

すると、太宰の側の壁に寄りかかって髪を後ろに一本で三つ編みにした同じ位の背丈をしたオッドアイの少女が尋ねた。

「ところで、何故君は高血圧の薬と低血圧の薬を混ぜているのかい?」

「まとめて飲んだら、楽に死ねるかなぁ~と思って。」

すると、森さんが

「太宰君、君は私が先代よりボスの座を継いだ時にその場にいた遺言の証言者だ。そう簡単に死なれては困る。」

太宰は、ビーカーの中身を飲むのを止めた。

~先代首領の寝室~

「お加減はいかがですか?」

「先生、対組織、軍警、ポートマフィアに逆らう者は全員殺せっ!」

ベッドに横たわる老人は掠れた声を出した。

「それは、非合理的です」

老人は意識が朦朧とするなか「殺せ!」を繰り返した。

森は、スッと先代首領の首元にメスを近付けた。
そして
「分かりました、首領」

と言うのと同時に首を切った。

「首領は病により往死された。次期首領に私を任ずると遺言を遺された。」

返り血で赤く染まった顔を少し後ろに立って傍観していた太宰に向かって

「君が証人だ。良いね?」

太宰は何も言わず、森の顔をじっと見ていた。


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