第7章 不在
10月に入り、センター試験の出願を すっきりとした気持ちで早々に提出した。模試の結果も相変わらずのA判定で、諫山先生にも “この調子で頑張るように” と肩をポンと叩かれた。
この日は授業がお昼までだったので、エミと恵子と三人で、学校の最寄り駅のそばに新しくオープンしたカフェに行ってみた。
店内はマヤの学校の制服の ネイビーのブレザーに赤いリボンタイ、ネイビー×ブルーのチェックスカートであふれ返っていた。
三人ともスペシャルパンケーキセットを注文した。ふわふわのパンケーキ四枚に北海道産生クリームとメイプルシロップがかかっていて、バニラアイスクリームが添えられている。セットのドリンクはエミがアイスコーヒー、マヤと恵子はアイスミルクティーにした。
「美味しいね~!」
「ふわっふわ! 最高♪」
マヤも、パンケーキの贅沢な甘さに幸せを感じた。
スマホを見ていたエミが、急に大声を出した。
「No Name、電撃移籍だって!」
「え!? どこに?」
恵子が応じる。
「ちょ…! 待って」
エミはスマホを食い入るように見ている。
「えっとね、スミスプロモーション! シャーディス音楽事務所から引き抜いたって!」
「スミスプロモーションって… まだ新しいけど社長が凄腕なんだよね?」
「そうそう!」
盛り上がるエミと恵子についていけないマヤは、目をぱちぱちさせていた。