第2章 進藤ヒカル
小さな頃から、碁を打つことが大好きだった。
父も碁打ちで、父がよく塔矢名人のところに勉強会をしに行っていたことで、私は塔矢くんと知り合った。
お互いに父を尊敬し、碁が好きだったこともあってすぐに打ち解けることができた。
塔矢くんは私より碁が上手くて、強くて、いつしか私の憧れになった。
「塔矢くんはどうしてそんなに囲碁が上手なの?」
「父さんが言ってくれたんだ」
「ボクには誰よりも努力を惜しまない才能と限りなく囲碁を愛する才能があるって」
「うらやましいな」
「私は全然強くないし、才能なんてないから…」
「そんなことないさ」
「きっと藤波にも」
「誰よりも努力を惜しまない才能と限りなく囲碁を愛する才能がある」
そんな塔矢くんの隣を歩きたくて、追いつきたくて、
私は今日も碁を打ち続ける。