obsidian is gently shines
第16章 unconscious infection
「リヴァイ、ありがとう。
手伝わせちゃってごめんね」
「気にするな、勝手にしてるだけだ」
壁一面に設えられた棚にむかう、セチアとリヴァイ。
今二人がいるここは、事務局専用の資料室。
定期的に行われる伝票整理をするセチアと、たまたま近くを通りがかったリヴァイがそれを手伝っている。という状況。
「そんなことより」
リヴァイは左腕で抱えた数冊のファイルのうち、一冊を棚に戻す。
「うーん…」
「さっきから何なんだソレは」
「へ?私なにかしてた?」
きゅっと背中をそらせるセチア。自然、お尻がちょっとだけ突き出る。本人に自覚はなかったようだが。
「クソでも詰まらせたか」
「詰まらせてません!ちょっとママのこと思い出してただけ」
「ナナバのこと…?で、なんでソレになるんだ?」
「あのね、実はこの間…」
… … …
「…っていうことがあったの。邪魔しちゃ悪いかなって思いながら聞いたから片言になっちゃって」
「相変わらずだな」
「あ、やっぱりそう思う?」
『本当に仲がいいんだよね!』と嬉しそうに口にする彼女へ、そういう意味じゃねぇ…と、リヴァイは口の中だけでぼそりと呟いた。
"相変わらず"とは、エルヴィンからナナバへのボディタッチのことをいっている。
とはいえわざわざ訂正するような事でもないので、リヴァイは今まで口にしたことは無い。
お陰でセチアにとっては"仲の良い二人だな"という意味になるわけだが。
嫁馬鹿が…と思いつつ目の前のファイルを棚から取り出す。
「これはこっちでよかったか?」
丁度一冊分あいたところへほんの少し差し込みつつ、横目でセチアに確認してみれば
「うん、大丈夫。……よっと…うーん…」
「お前、まだやるのか」
「あはは。あの時のママ思い出しちゃうと、つい勝手に。…細かったなぁ……」
「………」
「こう、きゅっとなった背中のラインがね、スッゴく綺麗だったの」
拭き掃除中のナナバをまね、棚の縁に手を掛けかるく背を弓なりに反らせる。もう何度目だろうかのポージング。
「………」
「脚は長いし、お尻は小さいし。あぁ~羨ましい~~~!」
片手をまわし、自分の尻を二度三度撫でては小さくぺちっと叩く。
「…ダイエット、しようかなぁ……」
「………」