obsidian is gently shines
第14章 baby step
リヴァイが行ってからは早かった。
あっという間に空気を変え、騒動を収める。
それどころか彼は衆人環視の中、宣言したのだ。
セチアと結婚する、と。
「エルヴィン…」
「すまない、戻るよ」
「お昼は?」
「何だかお腹いっぱいだ」
へにゃりと眉尻を下げ、足早に来た道を戻っていく。
「エルヴィン…、…パパ…」
ナナバもまた、一気に華やかな雰囲気になった食堂を見やり、エルヴィンの後を追いかけていく。
団長室にて。
執務机についたエルヴィンは、机上の一点を見つめたまま微動だにしない。
彼の背後には大きなガラス窓。
今日もよく晴れて、映りこむ木々の緑と空の青は、只のガラスをまるでステンドグラスのように見せてくれている。
「………」
「エルヴィン、大丈夫?」
「…あぁ…」
「パパ」
「ん?どうした、突然」
「よしよし。
よく頑張りました。
パパ偉い」
「ナナバ……」
あの時、私なら大丈夫、そう聞いて思わず飛び出しそうになった。
しかし、セチアのことを思えばこそ。
エルヴィン自身が出ていくのではなく…
「リヴァイに任せるのが一番だって、
そう思ったんでしょ?」
ナナバはエルヴィンの頭を撫でながら、うっとりと目を細める。
「セチアの為に、だよね」
それは
子離れしなくては…
いつかそう呟いたエルヴィンにとっての一歩。
そして
想いあう二人をさらに近付ける為の一歩。
「セチアのパパはすごい。
だから、自信もって?」
「はは、褒め過ぎだ。でも……」
ありがとう。
エルヴィンの言葉にナナバは頷くと、ご褒美にとそっと口づけを贈ったのだった。
fin