第1章 〜Encounter〜
「ナナさんは、ホントに綺麗だなぁ〜。」
「ありがとうございます!良く言われますっ。」
「はは、そこがまたいいよ!飾って無い所が最高!」
ここは夜の世界。いわゆる水商売を私はしている。
何も無くつまらない日々。とまではいかないが毎日浴びる程のお酒を飲み、目が覚めるともう既に日が暮れている。
そしてまた化粧をして仕事、そんな同じ様な日々を四年程送っていた。
お客様は大好きだが、そう言う感情では無い。
過去のせいもあってか好きと言う感情が分からなくなっていた私は現実で恋愛が出来ず、たまに現実逃避する為に二次元へ逃げている。
そんな私が、最近一人のお客様の事を気になり出していた。
「ハッ?!マジでナナちゃん俺の事殺す気?」
「え?」
「隣に座られたら…幸せ過ぎて死にたくなる。」
そう言いながら顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いている。
「っ……可愛いかよっ!!死なれちゃ困るけど、指名してくれてるんだから隣に居させて?」
今までの経験を生かし冷静を装うが、褒められ慣れている私でもこんな子犬みたいなイケメンに言われて照れない訳が無い。
(私の大好きなエレンにちょっと似てる!)
現実でキュンキュンさせられる筈の無い私は都合良くその人をエレンに被せてしまい、勝手にキュンキュンしていた。
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「お疲れ様です!」
「おつかれ〜!」
仕事の終わった私達は早々とドレスから私服に着替える。
「今日ナナさんめっちゃ飲んでましたね!大丈夫ですか?」
「ん、らいじょーぶ!エレンに癒されたから!」
「エレン?あ、指名で来てくれてた人の事ですか?ふふ、もう病気ですね…。私も進撃大好きですけど、私はやっぱり兵長かなぁ!」
「兵長もカッコイイけど、掃除出来ない私じゃ怒られちゃうもん!!おい、全てやり直せ、ってね。」
「ヤバイヤバイ!その格好で兵長の台詞は色々ヤバイ!」
酔っていた私は着替えの途中で下着のまま兵長のモノマネをし、話の合うアニメ好きな後輩と進撃の巨人ネタで盛り上がっていた。
その時、ズキンと勝ち割れるような頭の痛みに襲われた私は、バランスを崩し後輩の胸に倒れ込んでしまった。