第2章 〜Encounter with puppy〜
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「……書類の整理ばかりで退屈かもしれないが…。」
「大丈夫ですよ!」
それから半時間程話し込み、立体機動装置や馬を扱えない私は幹部達全員の執務を手伝う事となった。
進撃文字は確かカタカナを逆さにすると読めるが、私の仕事は皆がチェックした書類に判を押すだけでいいらしい。
(とりあえず今は何の力にもなれないけど、出来ることをしよう!)
この世界に入り込み、やはり厳しい現状を目の当たりにしてしまった私には
元居た日本に戻りたい、などと言う気持ちは既に無かった。
そんな事より、この世界で死ぬ筈の兵士を一人でも多く助けたい。
立体機動を使えないと言う事は壁外調査の度に本部で待機しなければならないと言う事だ。
もしかすると先の展開を忘れていて、調査の事前に伝え切れて無い場合もあるかもしれない。
私が立体機動装置を扱える様になれば
壁外調査に出て何が起こるかを思い出し、エルヴィンに知らせることが出来る。
明日から私も鍛えてみよう、そう思った時
執務室の扉が叩かれた。
「エルヴィン団長、失礼します!!」
エルヴィンの返事を待たずに扉を開けた人物は
私がここで一番会いたかった人物、
エレンだった。
「エッ、エレン!?」
「えっ?誰…ですか?」
視界に入った瞬間、ソファから立ち上がりエレンの元に駆けて行く。
現実の方が凛々しく見える目の前の子犬に、私は周囲の目も気にせず抱き着いた。
「えッ?!ちょッ、ちょっと…!」
「会いたかった!!」
今のエレンは一番大変な時期だろう。巨人化する自分に戸惑い、その力でさえも掌握しきれているか分からない状態だ。
更には皆の縋る思いがのしかかっている。
「そんなにエレンの事が好きだったんだねぇ!」
「はは、少し妬くな。」
「ノックぐらいしろ。」
様々な声が聞こえる中、エレンをキュッと抱きしめる。
「なっ!何なんだよ一体…っ!」
エレンを見上げると、赤くなった顔で必死に私の体を剥がそうとしている。
「可愛い!!無理!!」
「……は?かわ、いい?」