第1章 〜Encounter〜
人類の希望……そんな立派なものではないが、ハンジの言葉に胸が熱くなる。
「ナナ、君には知っている情報全てを、我々に報告して欲しい。」
エルヴィンが強い眼差しで私の目を見入る。
全てと言うのは誰が敵で誰がいつ死ぬか…。
だけではなく、巨人が人間だと言う話もいずれしなくてはならない。
リヴァイのあの時の絶望的な顔は忘れられないものがあった。
だが、エルヴィンなら結末を知った上で賢い立ち回りが出来るのではないか。
その期待の方が大きかった私は決意を固め、口を開いた。
「分かりました。」
エルヴィンがフッと微笑み、優しく私の頭を撫でる。
本日二度目だったが、皆の前でも堂々と撫でてくるエルヴィンにまた、赤面してしまう。
「そう言えばナナっていくつなの?まだ若いよね?」
「二十四です!」
「え……。」
いきなりのハンジの質問に答えると、リヴァイ以外が驚いた顔をして私の顔を見つめている。
「ど、どうしたんですか?」
「い、いや、二十四でも充分若いんだけど…。十五歳くらいかと思ったよ…。」
「すまん、俺もだ。」
確かに化粧をしてないと童顔の部類には入るが、至って日本人顔だ。
中間顔だと思っていたリヴァイですら、日本人顔と比べるとくっきりとした顔立ちをしている。
エルヴィンが躊躇無く頭を撫でていたのは私を子供だと認識していたからか、と思うと複雑な気持ちになった。
「じゃあ今夜、お酒呑めるよね?」
「へっ…?!」
またまた話の逸れた質問をニコニコしながら聞いてくるハンジに焦り、声が裏返る。
「呑めるも何も、昨日の様子を見る限りかなりの強者だろうな。」
エルヴィンが意地悪そうな顔でこちらを見ている。
「だ、団長?!明後日ですよね?壁外調査!」
まさかエルヴィンまで乗っかってくると思わなかった私は、いつの間にか団長呼びになってしまっていた。
「あぁ、そうだな。流石に明日は呑めないが、今日なら君の歓迎会が充分に出来る。もちろん、二日後の壁外調査の話も詳しく聞かせてもらうつもりだよ。」
こんな軽い感じでいいのかと一瞬戸惑ったが、歓迎されている事に素直に嬉しくなった私はコクリと頷いた。