第5章 ダークヒーロー
家族に愛されたかっただけなのに…焦ちゃんと会えなくなったこの8年で私は随分歪んでしまった。
雄英体育祭をテレビで見て焦ちゃんを見つけた時は嬉しかった。
でも、あのテレビの中の焦ちゃんは私の知ってる焦ちゃんより少しピリピリした感じで空白の8年間が変えたのは私だけじゃなかったんだと知った。
私は普通の中学高校へ進んで、普通の生活をして友達もできた。
学校にいる時は楽しいけど家業の仕事の時は苦痛だった。
私が仕事で人の臓器を抜き取ってることを友達が知ったらきっとみんな離れていってしまう。
焦ちゃんもきっと例外ではない、あんなに大好きだった焦ちゃん…なのに今は会うのが怖い。
好きだから、こんな汚い私を見られたくない。
ダークヒーロー…お父様はそう言ってたけど私はダークヒーローなんかより焦ちゃんの隣に立っていられるような立派なヒーローになりたかった。
個性も無いし今の私ではもう叶わない夢だけど…ね。
私が焦ちゃんと同じヒーローになれないのなら焦ちゃんに私というヴィランを捕まえてもらいたい。
焦ちゃん…大好きな焦ちゃん。
次にもう一度あなたに会う時、私たちは敵同士だね。
『…もうこんな生活嫌だよ、早く私を捕まえに来て……焦ちゃん』
1人になった自室で私はいつも焦ちゃんに捕まることを願って枕を濡らす。