第3章 あの夏の日の男の子
焦ちゃんは私を家に上げてコントローラーを貸してくれた。
『そういえば、焦ちゃん。このコントローラーって焦ちゃんのなの?』
「俺の兄さんのだ。」
『お兄さんいるんだぁ〜焦ちゃんって何人兄弟なの?』
「4人兄弟、上に兄さん2人と姉さんが1人」
私がこの家に上がる前に見かけたお兄さん2人とお姉さんが頭の中に浮かんだ。
あの人達が兄弟だったんた。
『そうなんだ…いいな、兄弟たくさんいて』
「いいことばかりじゃない。うちは個性婚で俺は成功作として厳しく育てられて…友達と遊ぶって事もあまりなかった」
最初に会った時何処と無く焦ちゃんと自分は似ていると思っていたけど、何でそう思ったのかが分かった。
焦ちゃんも家庭環境の中で孤独を感じていたからだ。
私と違って兄弟がたくさんいるからこそ感じてきたであろう疎外感。
同じ孤独でも私のそれとはまた違ったものだと感じた。
『そうなんだ…私のところも個性婚だよ。でも私は失敗作、無個性なんだ…うちには最近お父さんの彼女さんが来るけど、なんか居心地悪くてね〜私、焦ちゃんとここで遊んでる時が一番楽しいの』
焦ちゃんのことが忘れられなくてまたきてしまったといいかけてやめた。
背負っていたリュックを置いた時私はカメラを持っていたことを思い出した。
『あ、焦ちゃん!あのね今日私カメラ持ってきたんだ。一緒に写真撮ろ』
「何で写真?」
焦ちゃんは少し嫌そうな顔をしていた
『焦ちゃんと撮りたいからだよっ』
「………意味わからねぇ」
その時の私は彼の記憶に残りたくて必死だったことを覚えてる。
『分かった、じゃあヒロバト5回勝負で私が勝ったら写真撮ろう!私は一番強いオールマイトは使わないって縛りルール付けてもいいよ』
「しょうがねぇな…じゃ俺が勝ったらどうする?」
『んー…焦ちゃん勝ったら、焦ちゃんに撮れた写真一枚あげる!』
「結局それ写真撮ってるじゃないか」
『へへへ〜そだね!』
無理矢理写真を撮る約束を取り付けた。
結局私のいない数日間に、ゲームの熟練度を上げていた焦ちゃんに2勝3敗で負けたけどそもそも賭けにすらなってなかったから写真を撮って出てきた一枚を焦ちゃんに手渡した。