第3章 あの夏の日の男の子
その子を見て私は察した。
この子も私と同じだと…そして、私はその子に一目惚れした。
何となく親近感が湧いたと言うのもあってかとても惹かれるものがあった。
その子は轟焦凍と名乗った。
私は焦ちゃんとあだ名をつけて迎えが来るまでその子と遊んだ。
楽しかった。
今まで生きてきた中で一番楽しかったと言っても過言ではないくらい楽しかった。
焦ちゃんは、少し天然なところがあって優しくて一緒にいてすごく安心する人だった。
今までお父さんにご飯を作る事はあっても私の分は彼女さん達からもらったお菓子を食べるように言われていたから、お菓子以外を口にしたことがなくて焦ちゃんと食べた蕎麦の味は新鮮だった。
私は蕎麦が好きになった。
蕎麦を食べてる途中焦ちゃんと家族の話題になって腕の傷やあざを見られた。
焦ちゃんが私に触れようとした時とっさに体が震えて焦ちゃんの手を半身下がって避けた。
ごめんと謝る焦ちゃん、焦ちゃんに気を遣わせてしまったことに私も少し傷ついたけど焦ちゃんはその後何も言わずに蕎麦をたいらげてゲームに付き合ってくれた。
この1日は私の中でいろんな大好きが生まれた日になった。
そんな楽しい時間ほど終わりが近づくの早くて、夜の8時ごろエンデヴァーは約束通り迎えにきた。
『じゃあね、焦ちゃん!私今日すごく楽しかった!!ありがとうね〜また遊ぼうね』
「あぁ、またいつでも来い。待ってる」
手を振っては振り返り、また手を振る。
玄関まで出て焦ちゃんは私がいなくなるまで手を振ってくれた。
焦ちゃんとさよならするのは私にとってとても名残惜しかった。
その日エンデヴァーに送ってもらって家に帰るとお父さんは帰ってきていて、私にごめんなと泣きながら謝ってくれた。