第3章 プラマイゼロ * 宮地清志
だけど、それとこれとは別だ。
恥ずかしいし、何よりこの体勢が続くのはいたたまれなくて。
降ろして、の意味を込めて肩をポンポンと叩く。
それでも腕の力が弱まることはなく、降ろしてくれる気配もないので、
『清志、降ろして。』
と声に出せば、やだ、と一蹴されてしまった。
「ベッド行こうぜ。ここだと痛むだろ。」
『えっ…。』
私の答えを待つことなく進む清志の足取りに迷いはない。
普段から筋トレをしているおかげか、私を抱えていてもふらついたりしないのが救いだ。
けど、こうして寝室へ連れて行かれるのは自分で足を動かすよりも恥ずかしくて、隠れるように清志の肩口に顔を埋めた。
しかし、それも寝室に行くまで。
ベッドへと寝かせられればさっきまでの軽口が嘘のように一瞬で雰囲気が変わる。
電気の消えている薄暗い室内で、唯一リビングから漏れてくる光が淡く清志を照らし出して。
その表情に、視線に、これからの期待に。
ドクリと心臓が跳ねた。
「自分で脱ぐ?それとも脱がせてやろーか?」
意地悪な笑みを浮かべてそう問いかけてくる清志は、明らかにこちらの反応を楽しみにしている。
どう答えたら正解なのか、一瞬悩んだけど清志の表情を見て何となく理解した。
『好きにして…?』
自分が出せる精一杯の甘い声でそう答える。
すると、清志はゴクリと喉を鳴らし一気に首筋に顔を埋めてくる。
ペロリと舌を這わせた後、首をきつく吸われてピリッとした痛みが走った。
「どうなっても知んねぇぞ。」
それに応えるように清志の胸に手を滑らせ、固い突起を一撫でする。