第3章 プラマイゼロ * 宮地清志
自分の頭に浮かんできた考えを振り払っていると、清志に顔を覗き込まれる。
「何考えてんだ?」
『別にー?』
「ふーん…。」
ジリジリと距離を詰められ腰を引き寄せられる。
『な、何?』
「なんか、ヤラシー事でも考えてたんじゃねぇの?」
そうやって耳元で囁かれながら、腰をスーッとなぞられる。
その柔い刺激にビクッと身体は反応してしまう。
「反応してんじゃねぇか。」
『ち、違っ…!』
「お前さっき、太ったとか気にしてたよな?」
『それが何よ…。』
シュークリームが手からスッと離され、ニヤリと笑う清志が目の前に。
グッと腰を引かれて近かった距離を更に詰められると、そのままゆっくりと床へと押し倒される。
『え、何?』
清志の行動の意味が分からず首を傾げれば、清志はとんでもない一言を落としてきた。
「運動しよーぜ?」
耳にそっと触れられ、耳朶を甘噛みされると不意に声が漏れる。
その声を聞いて、清志の目にスイッチが入るのが分かった。
清志が言った言葉の意味を、この状況、この体勢で分からないほど子どもじゃない。
でも、背中に当たる感触はいつもの柔らかい布団ではなくフローリングの固い床だ。
まさかこんなところで…、と戸惑っている私なんてお構い無しにちゅ、と軽く唇が落とされる。
啄ばむようなキスを繰り返した後にスルリと口内に侵入してくるのは、さっき私を動揺させた赤い舌。
「んっ。」
『はぁっ…、んっ、ふっ、ぁあ。』
柔らかい感触が私の舌を捕らえて、ちゅくりと絡むと微かに香るバニラ。
それも始めだけでキスを繰り返すうちに消えていったが、雰囲気を甘く変えるのには充分だった。