第1章 俺を愛して《観音坂 独歩》
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いい匂いがして目が覚めた。
キッチンから聞こえる作業音。
重たい腰を上げてキッチンに向かうと
独歩が朝ごはんを作っていた。
「叶、おはよう」
「おはよう、いい匂いする」
「うん、叶の為に作った」
「ありがとう、今日は休みだっけ?」
「そうだよ、叶も休みだよね?」
「じゃあ今日はゆっくりしよう」
そう言ってご飯を任せてリビングに戻る。
独歩が作ってくれるなんて、珍しい。
………アレ、今日休みって話ししたっけ?
先生に電話した事も何で知ってるんだろう。
————もしかして。
思う事は有ったが、ご飯ができた様で
テーブルに並べられる。
「さあ、食べて」
「ありがとう、いただきます」
「……叶、アイシテル」
陽気な口調。
気を失う前に言われた様な気がする。
少し怖くなって彼を見る。
「俺だけの叶。
首の痣、なんだか首輪みたいで可愛い」
そう言って、彼は嬉しそうに嗤っていた。
俺を愛して【 end 】
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