第3章 君の幸せ笑顔[アバ そらちぃ]
「エイジとみつとりくもありがとう!」
みんなも来てくれてよかった。と彼女は安心したように言う。
「当たり前じゃん。」
「ほんと有名になったね、アバンティーズ。」
その元メンバーだったなんて、なんか嬉しい。と恥ずかしそうに彼女は語る。
「アバンティーズのメンバーで楽しかった?」
ほんとは俺と居て楽しかった?何て聞きたい。
でもそれは告白同然だと思い諦めた。
「楽しかったよ。最高だった。幸せな青春だった。」
幸せ。彼女の口からそれを聞けて俺は少しホッとした。
「そらが誘ってくれなかったら私幸せじゃなかったかもね。ありがとう。」
「あっ」
時間らしく新郎に呼ばれてしまった彼女。
「じゃあ私行くね、スピーチ楽しみにしてる!」
俺は彼女に友人からのスピーチを頼まれていた。電話で頼まれて彼女の願いならと了承し、切ったすぐ後にはエイジに泣きついた。
彼女にとって俺は所詮友人程度。彼女は遠い存在だと感じた。
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「新婦友人スピーチには大木空様がスピーチを行います。ではお願いいたします。」
「スピーチをさせていただきます。
新婦の友人、大木空です。
まず新郎新婦、ご結婚おめでとうございます。」
スピーチは少しふざけながらもそれが俺らしいと思い書いた。
昔のYouTube活動のことも読み、彼女は目に涙溜めていた。
そしてもうひとつ思いを伝えた。
「笑い話程度に聞いてほしいのですが、新婦、俺は小学生の頃からずっとあなたを想って生きてきました」
「.....え?」
困惑する彼女に罪悪感を覚えながらも読み進めていく。
「ずっと振り向かせる策に出ても彼女の僕に対する接し方は一向に変わらず、僕は気づきました、「彼女にとって僕は友人だ」と。」
その時にはもう俺の頬には涙が伝っていた。
「そら.....」
「気づいたけど諦めきれないまま時間を過ごして、今日彼女は結婚した。僕の恋はここで終わりです。でも最後にこれだけは聞いてほしい。」
「ずっと、好きでした。あなたを想って約10年間、一度もあなたを忘れたことはありませんでした。恋は楽しかった。ありがとう。お幸せに。」
彼女は俺の方に向かってきて、俺を抱き締めた。
「なんで.....」
彼女は泣いていた。
「ばか、伝えるの遅いよ。」