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続短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第10章 おとぎ話にレクイエム 月永レオ


真夜中だけど、外に出る身支度をした。
部屋の前を通るときに親が何か言うかと思ったがぐっすり眠っていた。

玄関のドアを握るときに、少し冷や汗をかいた。が、たったそれだけで。


拒んでいた外の世界は私を出迎えた。


最後にいつ着たか思い出せないワンピース。劣化したサンダル。

走るには向いていない。

それでも、秋の夜にはちょうどよく思えた。


変な汗が出た。家の外アレルギーなんだろうか。もう帰りたくて仕方がなかった。

初めて会った、あの場所へ。


曲を売り歩いていた頃、その帰り道。夜に。



彼はそこで歌っていた。キレイな曲だった。


『素敵だね』


気づけば声をかけていた。

走りにくいのに、何でこんな格好なのかを思い出した。月永に初めて会ったときと同じ服だ。


時を越えて思い出が駆け巡った。



「月永ッ!!!!!」



家からそう遠くない公園に、彼はいた。久しぶりの姿に叫んだ。

彼は私を見て驚いていた。


「書いたよーーッ!!レクイエムーーッ!!!!」


ありったけの声で叫んだ。まだ遠くにいる彼は、目を見開くだけだった。


「書いたよ!!でも、月永ッ!!君はまだ、生きていて!!!」


叫びながら近づいていく。 


「現実では生きていて!!でもッ!私の中では死んでいたッ!!!!!」


だんだん近づくなるごとに声を落としていった。いや、私の体力切れが正しいか。


「……………………君を書こうと思っても、わからなかった」


月永にたどり着く前に、私は止まった。手を伸ばせば届くのに。


「名前しか思い出せない。電話越しじゃない声も、顔も、仕草も。私は忘れていた。

こんなの死者と同じ。」


だから、と続けた。



五線譜を差し出した。
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