第10章 おとぎ話にレクイエム 月永レオ
電話が切れた。外は真っ暗だった。
月が窓の外に見えた。
月永の顔が見えた。
…………気がした。
思い出せなかった。彼の写真なんてないし、アイドルに興味がないからグッズもないし。
彼の顔が思い出せなかった。
もうどれくらい会ってないんだろう。元気にしてるのか。復活したって、何でだろうか。
また、あの馬鹿みたいな笑顔を浮かべているのだろうか。
「……………死んじゃったの?」
部屋で一人でぼやいた。
私が思い描く、私が知る、私が見た、私が聞いていた、私が思い出せない、その、人は。
気づけば私は床のゴミを拾い集めていた。机の上に乗せると、それはゴミから五線譜になった。
鉛筆を握る。
私は書いた。
レクイエムを書いた。