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続短編集…あんさんぶるスターズ!【あんスタ】

第10章 おとぎ話にレクイエム 月永レオ


『なぁ、俺のレクイエム書いてくれないか。』


月永はしつこかった。


「同じことを言わせないでよ。」

『お前の詞が良いんだって。』

「妹さんに書いてもらえば?」

『お、ま、え、の、が、い、い、の』


部屋とネットに閉じ籠る私は、彼の正体を知っていた。月永はアイドルだ。最近復活したばかりの。
何があったのかは知らないし知る必要もない。が、彼は良い方向へ向かった。


「あのね、レクイエムは死者のための歌なの。」

『知ってる。』

「生きてるでしょ。」

『それでも、レクイエムが良い。』


ずいぶんとワガママだ。どう反応していのかわからない。


『生きてる人だって昔は死んでたんだ。書くべきだと思わないか?』

「思わないね。生きてる人は昔、生まれていなかっただけで死んでいたわけではないから。」

『生まれてなかったなら死んでたってことだろ。』

「横暴な理論だね。私はそれに納得できないけど。」


彼はよく揚げ足をとってくる。普段はちんぷんかんぷんなことしか言わないくせに、作曲になると熱くなる。


『俺がメロディを作るからさ、お前が作詞してくれよ。』

「冗談でしょ。生きてる人間になんて馬鹿馬鹿しい。」


私はイライラして机の上の五線譜を払い落とした。また床に落ちるゴミが増えてしまった。


『……………………なぁ。』

「何?」

『俺がさ、死んでる人間なら、お前は書いてくれるのか?』


月永が言った。


「変なこと考えないでね。」

『変なことを考えてほしいんじゃなくて、自分を原因にされるのが嫌なんだろ?』

「当たり前でしょ。」

『レクイエムは死者のための歌。』

「だから死ぬって言うの?」

『悲しいか?』

「さぁね。嫌だとは思うけど。」

『そっか。泣いてくれないか。』

「ねぇ、何でそんなにレクイエムがいいの?普通に詞を書いてって言うなら書くのに。」


私達の会話は途切れた。
月永の言葉を待った。


『死んだから。』


彼は、言った。




『俺は死んだから。』






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