第10章 おとぎ話にレクイエム 月永レオ
レクイエム。鎮魂歌。
同じ意味。
死者のための歌だ。
「まだ生きてるでしょ、君」
私は真っ白な五線譜を机の上に置いて電話の向こうの彼に言った。
「レクイエムには早いんじゃない?」
趣味で作曲と作詞をやって動画をサイトにあげたりしていたら、何だかネットで有名人になってしまった。
現実では外へ出るのも恐ろしくて、ホントになんにもできないろくでなしの私なのだが…。
所謂引きこもりというやつだ。親も半分は諦めてる。
ネットで有名人になる前は、外に出て自分の曲を色んな人に聞いてもらいたくて様々な場所に売りに行った。使ってくれる人もいた。
でもある日突然、私から歌が消えた。
詞も旋律も、私の中で思い浮かばない。
似たような曲をリメイクし、サイトにあげる毎日。好評だし、嬉しいコメントを皆がくれる。
だけど。
もう、新しいモノは私から出てこない。
限界なんだろうと思う。
部屋に五線譜を撒き散らして、依頼が来たらそれらしく曲を書く毎日。
先程の電話相手は作曲仲間と言うか、そんなつてで出会った男の子だった。
名前は月永レオ。
最近はめっきり塞ぎこんで、私みたいになっているらしい。
部屋で音符とにらみ会うのも、辞書を引いて何となく合いそうな言葉を探すのも、もう飽きた。
外に行って学校へ通ったって、きっと何も変わらない。
過ぎていく。
ただ時間だけが過ぎていく日々だ。