第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
警備員も夏目ちゃんも姿を消していた。探しても見つからなくて困ったけど、知らぬ間に先に帰るとメールが来ていた。
………夏目ちゃんにも言いたいことあったのに
「」
なんて考え事をしながら校門に突っ立っていると、つむぎに声をかけられた。
「さっきは夢中で何も気にならなかったんですけど、さっきのっていったいどういう心境の変化ですか?全然笑ってくれなかったのに。」
思い出したらまたうるうるきたのか、目元をこすった。
「…………そうだね」
さっきは笑ったり泣いたりしたけど、また“空っぽ”に戻ってしまった。
やはり、急に感情を取り戻すのは無理だ
「…………………………思い出した」
「何を?」
「…………………………笑ってたときのこと」
夏目ちゃんが私に怒鳴ったとき。走馬灯のように、つむぎとの思い出が駆け巡ったあのとき。
空っぽになる前の私がそこにいた。
「……………つむぎは、私の笑顔がもう一回見たいって言った」
「………覚えてたんですか…?そんな前のこと…。」
「…当たり前だよ。つむぎは、いつもそばにいてくれてた。寂しささえ感じることのない私が寂しくないようにって。」
矛盾した、意味のない行動。それでもつむぎはひたすら私に向き合った。逃げなかった。
「つむぎがしてくれたことは、全部残ってるよ。」
「……」
「何も感じなかったけど、記憶には残ってる。」
つむぎはまた目に涙をためた。
………よく泣くなあ。
「私に感情はわからない。でもつむぎがしてくれたことの全てに意味があった。それはわかる。」
「…」
「思い出したんだ。私は本を読んで、桜を見て、夜の町を探検して笑ってたんだよね。」
そう。
つむぎが私にしてくれたことの全ては。