第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
夢ノ咲の校門についたとき、見えた。
警備員も夏目ちゃんも私には写らなかった。
「つむぎッ!!!!!!!!!!!」
感情のままに叫んだ。
その正体はわからない。
感情を知るには、私は感情を捨てすぎた。
「…………………?」
泣きながら叫んで、肩で息をする私をつむぎがとらえた。
「………………………………」
信じられないものを見るように彼は固まっていた。
「……私…」
つむぎが何も感じない私にしてきたこと。その全てに意味はあった。
本を貸してくれた。桜を見せてくれた。家に帰る理由をくれた。
笑って良いよと、言ってくれた。
「笑って、良い…………?」
何年ぶりだろう。
ずっと使っていなかった口角は、案外簡単に上がった。
笑えた。
つむぎが目を見開く。
と思えば、少し細くした。口を開けて、何回か言葉を探すように動かした。
「笑ってください…………ッ…!!!!!」
つむぎが細めた目から涙が零れた。
私の目からも溢れ出た。
「………ありがとう…」
どちらの口からもその言葉がもれた。
夜の夢ノ咲に、何かが咲いた。
私達は、それを感じた。