第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
「俺のワガママでした、全部」
夜風につむぎの涙が流れた。
「…………笑って、欲しかった……………ただそれだけの、一途なワガママでした…」
『夏目ちゃんへ』
久しぶりに届いた女友達からの手紙は、不快な呼び名から始まった。電子が当たり前の時代に随分アナログな彼女は、高校時代の“兄”達を思い出させる。
『お元気ですか?夏目ちゃんとはなかなか会えないから、寂しいです。』
寂しくなんかないくせ二、と皮肉れたことを思った。
『ついこの前ばったり会った天祥院くんが君によろしくと………』
そこからはかっ飛ばした。
『つむぎともばったり会ったよ。夏目ちゃんともばったり会わないかな。』
そんな奇跡あってたまるカと毒づく。
『何か大きくなってかっこよくなってた!モジャモジャだけど!!』
大きいなんテ、元々あの人でかいだろウ
『めがねキラキラしてました、ていうか全体的にキラキラしてました。久しぶりに会うと携帯アプリのフィルターみたいなのがかかってました。』
もはや何を言っているかわからない。
『感情ってやっぱりややこしいです。そこで一つ、夏目ちゃんに相談があります。』
手紙の最後の文に目をやった。
「ふン、まあ良いんじゃないノ」
夏目は投げ捨てるように言い放ち、手紙を閉まった。
でもその横顔は、どこか安らかな微笑みを浮かべていた。
『つむぎを好きになって良いですか?』