第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
夏目ちゃんは散歩に連れていってくれた。遠くのデパート、隣町、近くの公園。
やっぱりつむぎはいない。
「………、何でボクがこんなことしてるカ聞きたくなイ?」
「別に」
ある日しびれを切らしたように聞かれたが、私はいつも通りで返した。
「………………………夏目ちゃん」
その日は近場の公園で、ブランコに座って話していた。高校の放課後の時間に遊ぶ小さな子供たちはいないため、独占できた。
「夏目ちゃんは占い師だよね。」
「うン」
「色んなこと考えるのって、辛い?」
「別二。………どうでもいいけどサ」
彼は突然ブランコから立ち上がり、私を見下ろした。
「何も感じようとしなイ、欲しようとしなイ……そんな楽な生き方してるに言われたくなかっタ」
「………………………………………………………」
彼はハッとして、不味いことでもしたように顔を背けた。
でも。
「夏目ちゃん、平気だよ。」
私は……だって。
「空っぽだもん。何もない私を相手に、申し訳ないとか、わざわざうっとうしいとか思ったりして時間を割かなくていいんだよ。」
「……ッ違ウ!!わからないノ!?何でボクがこんなことをしてるのカ!!!」
夏目ちゃんが怒鳴る。それでも私は何も感じない。
「私ね、何も考えないようにしてるの。疑問を持たないようにしてるの。だからそんなこと考えたくないの。」
「考えろッ!!!」
本気で怒っているのか、語尾からまた違和感が消えた。私のブランコのチェーンを乱暴に揺らし、私を地面に落とした。
「…………」
「痛いとかないの!?何するんだとか怒ってよ!!」
「…………」
地面に横たわる私の肩を、夏目ちゃんはガッと押さえつけた。
「…………………いいノ…?」
「何が」
「ボク、男だヨ。夏目ちゃんとか呼んでくれるけどサ。ひどいことするかもしれないヨ。」
私は、彼の顔を見た。視線をそらすこともなく。
「………………………何で」
目が泳いでいて、肩を押さえつける手が震えていて、何かをこらえるように下唇を噛んでいる。
「そんなに悲しそうな顔をするの?」
私はわからなかった。
「………………………教えて、夏目ちゃん」