第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
『空っぽでいなくていいヨ』
あの時、夏目ちゃんの声は震えていた。
『自分に正直でいいんだ、』
語尾に違和感が消えた。
『もう良いんだよ、は人間なんだ。ボクらと同じだよ。』
___笑うな
___泣くな
___怒るな
___自分を持つな
私は最初から空っぽだったわけじゃない。
空っぽになったのにはきっかけがある。
私には感情があった。でもその感情が疎ましく言われることがあった。
『ほら、泣かないの』
転んだときに母が言った。
『ケンカしちゃだめよ、怒らないで』
保育園の先生が言った。
『真面目なときは笑っちゃ駄目なんだよ』
小学校の担任が言った。
何事にも時と場合がある。でも、その時と場合を見分けるのが難しく感じた。
だから私はとある結論に行き着いた。
『私が何もしなければ、誰も何も言わない』
それが空っぽの始まりだった。