第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
私は相変わらず空っぽで、両親からたくさん心配されて、友達も少ない。
「、夢ノ咲に行きましょう!」
そんな奴が真面目に学校に通うはずもなく、紬が来るときには家にいる。
両親は引きこもりの娘を連れ出す彼に加担しているらしく、なにも口出しはしない。
「………いやおかしくない?つむぎ、今日何曜日?」
「土曜日です!今日なら他の生徒もいませんし!」
「…………………………」
私は頭を抱えた。
嘘だろうと空を仰いだが、つむぎは強引だった。
「ほら、行きましょう」
私は差し出されたその手をとった。
あぁ、やっぱり私は空っぽ。
ここにも私の意思はない。
つむぎは学院の隅々を案内してくれた。こんなことしていいのかと聞いたら、天祥院くんに許可をもらったからいいと言う。いったい何者なんだ、彼は。
「……土曜日とはいえ、本当に人がいないね」
アイドル育成に特化してるらしいしこういう休みの日こそ練習やライブをするんじゃないだろうか。
「あぁ………………。人間ですから、休まないと…なんですよ。」
つむぎの顔に影が落ちた気がした。
どうしたのか聞こうとしたところで、彼は足を止めた。
「約束の時間に遅れるとか何考えてるわケ?」
そして、私のもう一人の友達の声。
顔を向けると憎悪の顔を浮かべた夏目ちゃんがいた。
「……………おいデ、。」
「え、夏目ちゃ……っ!」
グイッと手を引かれた。そんな強い力………ってそうか、男の子だもんね。
「約束って何?」
私が聞いても二人は答えない。
何も言わないまま、つむぎは私に背を向けた。
「つむぎ…………?」
名前を呼んでも、振り向いてくれなかった。
「待ってよつむぎ。一緒に帰ろうよ、ねぇ。」
私が背中に手を伸ばす。
しかし、その手は夏目ちゃんが遮った。
「むだだヨ、」
つむぎの背中はどんどん遠くなる。
夏目ちゃんの言葉の意味はわからなかった。わかるはずもなかった。
彼の手を振り払うこともできなかった私には、わからなかった。