第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
私は空っぽだった。
小さい頃から笑ったり怒ったり泣いたりするのが苦手だった。
そんな私に友達がいた。
青葉つむぎ。
つむぎは私と違って感情豊かだった。
どんなことがあってもニコニコしていてマスコットみたいな男の子。
感情のない私を心配した両親がつむぎの親が運営するアイドル養成スクールに通わせた際に彼と出会い、まだ友好関係は続いている。夏目ちゃんとはそこで会った。
夏目ちゃんとは短い付き合いだったのに覚えていてくれた。
と、そんな良いもので浄化なんてさせない。
私はズンズンと夢ノ咲の廊下を歩いていた。無感情にほぼ男子校の校内を歩く女子をすれ違う人がチラチラ見てくる。
私はそこに彼がいることを夏目ちゃんから聞いていた。
図書室のドアを開けると、中には誰もいないように見えた。が、私は何となくおっとりした彼が作業に追われている光景を描いていた。
「見つけた」
図書室の奥の本棚で、整理をしていた。
「………………?」
彼は目を点にした。
「どうしたんです?夏目くんには会えませんでした?」
心配したように彼は私に声をかけてきた。
「会えたよ」
「じゃ何で……」
「帰ってって言われた」
私がそう言うと、彼は笑った。弱々しい微笑みを浮かべていた。
「そうですか。なら俺と帰りましょう。もう終わりますから。」
つむぎは私の頭に手をのせた。子供扱いをされてるような気がした。
それでも空っぽの私には何も感じることがない。
これが好きだとか嫌いだとか、今まで感じたことがなかった。
「おや、つむぎ。」
その時、私たち以外の声が聞こえた。
「知らなかったなぁ、君がこんな可愛いお嬢さんを連れてくるような奴だったなんて。」
あの天使みたいな笑顔を、私は決して忘れないだろう。
「初めまして。」
天祥院英智。
今となっては、私の大の親友である。