第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
彼は、信じられないものを見るように私を見た。
「なノ………?」
私はその声と姿を見ても誰かわからなかった。
目の前の、何かに怯え、何かを嫌悪する………
夢ノ咲学院の男の子が。
「夏目ちゃん?」
私が話を聞くと驚きの真実が明らかになった。
「その呼び方やめてネ、呪うヨ」
「冗談だよね………?」
彼は何とも言えない顔をしたが、怒っているのはわかった。
女の子だと思っていた相手がまさかの男の子で、自分より大きくなっていて声も低くて…………
「………もう帰っテ」
「…でも」
「何をしに来たのかしらないけド……お願いダ。ここでは何も聞かないデ。何も見ないデ。何も感じないデ。」
「………夏目ちゃ「その呼び方やめてってバ」」
彼は、下唇を思いっきりかんで拳を握りしめた。
「を巻き込みたくなイ」
これは、一年前のお話。
まだ私が空っぽだった、何もない日のお話。